~ トリア、ハイデルベルク、フライブルク ~
ドイツの中でも特に長い歴史をもつ13の古都をメンバーとしている「ドイツ歴史古都連盟」。町のいたるところに歴史の重みを感じられるこれらの古都は、ルプレヒト・カールス大学(ハイデルベルク大学)を擁するハイデルベルクをはじめ、長い伝統につちかわれた大学の町でもあります。そんな町に住む人たちのわが町への愛情は深く、大学関連の研究機関等が多いこともあり、環境問題やエネルギー問題に真摯に取り組む姿も垣間見ることができるのも最近の特徴です。
そんな中、2005年10月25日から31日にかけて、日本やフランクフルトにある旅行代理店各社を招待し、経済・科学・福祉・環境・農業といったテーマでドイツを学ぶため、トリア、ハイデルベルク、フライブルクでの研修旅行を実施しました。今回は特に、より専門的な興味や知識をもって旅する人たち向けの視察旅行(テクニカル・ビジット)の視察先を中心に訪れました。
ドイツ最古の町として知られるトリアは、ワインの町としても有名です。ここではやはりワインに関する視察先が充実しています。「ザール・モーゼル・ヴィンツァーゼクト有限会社 Saar Mosel Winzersekt GmbH」では、醸造において重要な作業は手作業で行っており、そうしたワイン醸造に関するレクチャーが受けられるほか、試飲もできます。「ブドウ栽培教育園とフォン・ネル醸造場 Trierer Weinlehrpfad und Weinprobe auf Weingut von Nell」は、1803年創業のワイナリーで、8代目オーナーであるフォン・ネル氏の説明を受けながらの試飲やセラー見学はもちろん、1805年にナポレオンによって作られたといわれるレストランで、郷土料理もいただくこともできます。
また現在、注目を集めているのが、「ゼリッヒ農場 Hofgut Serrig」や「ホスピツィエン連合 Vereinigte Hospitien」といった、障害者の方々の自立をサポートすることを目的とした福祉施設で、農作業やワイン生産の現場で、障害の程度にあわせた仕事に従事しています。特に「ホスピツィエン連合」は、障害者・高齢者の方々のための施設と専門病院の複合施設で、ワインとゼクトの生産に力を入れています。こちらでは、醸造場の見学のほか、5種類のワインを試飲することができます。
トリアでの視察では、土地の特産と社会福祉といった活動を結びつけることで、それらの活動がより地元に密着した、内容の濃いものになるのだということを実感しました。
ハイデルベルクと聞いてイメージするのは、ネッカー川のほとりの学生の町またはロマンティックな城の町という方が多いかもしれません。今回も、大学の施設や城を訪ねたり、旧市街を散策するという時間も楽しみました。しかしハイデルベルクの魅力はそれだけにとどまりません。実は環境問題やエコロジー、都市計画、社会福祉などに力を入れている町でもあり、今回も、そういった施設や取り組みについて見学しました。
観光客や買物客でにぎわう旧市街。その歴史的地区では、環境に配慮しつつ、生活環境を現代的に整えるという都市再建プログラムが実施されています。歴史的な建築物の保存と同時に、交通網や道路の整備、駐車場や緑地をバランスよく配置するなど、過去・現在・未来がうまく調和した町づくりが進められています。また、ハイデルベルクにはヨーロッパ最大のコンポスト施設があり、家庭や企業から出る大量のゴミを、無駄なエネルギーを使わずに微生物の力によって肥料へと変えています。
視察先の中で興味深かったのは、旧市街に新しくオープンしたホテル「Hip-Hotel」。外観は旧市街の雰囲気を損ねない、落ち着いた佇まいながら、一歩、中に入ると、そこは現代的で斬新なアイディアにあふれていました。15の部屋には、ニューヨーク、ロンドン、マラケシュといったように世界各国の都市の名がついており、それぞれその都市をイメージしたインテリアでコーディネートされています。残念ながら、東京の名を冠した部屋が一番小さく、一番広い部屋は、当地・ハイデルベルクの名を冠したテラスのついたスイートルームでした。
このように、ハイデルベルクでは、その歴史的な顔はもちろん、大学都市ならではの研究施設の充実ぶりや、環境問題・エネルギー問題に真摯に取り組む顔も見ることができました。
“黒い森”の首都とされるフライブルクは、ドイツの中でもいち早く環境問題やエネルギー問題に取り組んだ町として知られています。また最近では、スパや自然を楽しんだり、土地の食材を使った料理を味わったりといった、スローライフについての視察も盛んに行われています。
フライブルクにはヨーロッパ最大の太陽エネルギー研究所「フラウンホーファー研究所 Fraunhofer Institut Solare Energiesysteme」もあり、今回は特に、太陽エネルギーの活用法に注目して視察を行いました。エコホテルとして数回の受賞に輝く「ホテル ビクトリア」など、数ある視察先の中で、特に興味を魅かれたのは「ボーバン団地 Quartier Vauban」でした。この地区には、プラスエネルギーハウスと呼ばれる、ソーラー発電装置を備え、自宅での必要量以上の電力を作り出すことのできる住宅ばかりが並んでいます。余った電力は電力会社が購入し、住民の利益となります。また、こうした太陽光発電事業に出資、そういった事業を行っている会社に投資することで利益を得るというビジネスの形もすでにできあがっているのです。
今回の視察を通して、省エネルギー施策のほかにも、フライブルクでは自然保護や住宅問題、交通システムなどの問題についてさまざまな配慮がなされていることを実感できました。また、それらは行政の力によるというよりはむしろ、住民が中心となって真摯に取り組んできた結果によるところが大きいというのも、フライブルクという町の特徴のひとつかもしれません。
今回の旅を通じて、参加者の皆さんは、より専門的な興味や知識を満足させてくれるドイツ旅行をコーディネートするための、さまざまなアイディアや経験を得られたことと思います。
text by 成田美友
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