保養地区
南北に走るヴィルヘルム通りの東にある広大な緑の敷地。クアハウス、カジノ、州立劇場、イギリス式庭園が配置され、クアハウスにはプラタナスの並木道をとおっていく。クアハウスは「保養客のクラブハウス」と理解すればよいだろう。1904年から3年かけてつくられた。出入り口のホールにはイオニア式の柱がならび、柱廊には市の紋章「3つのユリ」と「アクイス・マティアシス」の文字が見える。アクイスは鉱泉、マティアシスはローマ時代この地に定住していたゲルマンの部族マティアーカの意味。クアハウスは会議やイベントの会場として、現在もつかわれている。特筆すべきは、クアハウスの風格あるカジノ。あまたの有名人が、このカジノで遊んでいる。ロシアの文豪ドフトエフスキーは、長逗留してルーレットに熱中して大敗。なんどか金を送ってもらったが、それでも借金をかえせなかった。そのときの体験をもとにして、のちに「賭博者」という傑作中編を書いている。ドフトエフスキーの遊んだルーレット台は、カジノの入口に展示されている。数字にダブルゼロがある珍しい台。
エピソードをのこしたもう1人の有名人は、ビスマルク。ドイツを帝国として1871年に統一した偉大な宰相も、若いころカジノで大負けに負けて「財産の半分をすった」という。作曲家ワグナーも客だった。クアハウスに向って左にシアター・コロネード。ヨーロッパでもっとも長い柱廊である。約130メートル。1827年の建造。右手はヘッセン州立劇場。
コッホ・ブルンネン(源泉)
旧市街の北にある。15の源泉から熱湯がひかれている。温度は66度。御影石の水盤が置かれていて、赤く鉄分がういている。ローマ時代、この鉄分は「マティアーカの玉」とよばれて髪染めにつかわれた。寺院とよばれる小さな建物がある。1854年の建造。
旧市街
シュロス広場のかっての宮殿は、ヘッセン州議会になっている。プロイセン領からドイツ帝国の時代にかけて、プロイセン王やドイツ皇帝たちが滞在した。向い合って、旧市庁舎がある。町でいちばん古い建物。木組みの家だったが、1829年以来石造りとなった。通りをはさんで新市庁舎。簡素なドイツ・ルネサンス様式。ドイツ帝国の鷲、ナッサウの獅子、ヴィースバーデンのユリの紋章がある。
マルクト教会は赤レンガ造り。19世紀なかばのネオ・ゴシック様式のバジリカ(長方形の聖堂)。
ヴィルヘルム通りの建物群
通りの南に文化芸術関係の建造がならんでいる。展示会やコンサートが催されるヴィラ・クレメンティーネや芸術協会。ヴィースバーデン博物館は3つの博物館からなり、ヤウレンスキー・コレクションのある美術館、自然科学博物館、ナッサウ古代博物館で構成されている。通りをはさんで会議場と展示会センターのライン・マイン・ホール。
ネロベルク
町の北にある丘。標高245メートルで森が深い。山頂には登山鉄道でいくと興味深い。鉄道は1888年につくられた。下りの車輌のタンクに水をいれ、さがっていく勢いで上りの車輌をひきあげるシステムのエコ列車。
森の中にギリシャ正教様式の礼拝堂がたっている。円蓋(えんがい)はロシア式のタマネギ形。金箔で覆われ、木々の緑によく映える。ナッサウ公が19歳でなくなった夫人エリザベートをしのんで建立(こんりゅう)した。1855年完成。夫人はロシア皇帝の姪だった。
◆特集「“小さな路面電車”で町を散策 ~クラシカルな“電車”とネロベルク」
ラインガウ地域とエバーバッハ僧院
ライン川畔の港からは遊覧船がでている。ユネスコ世界文化遺産でローレライもある中部ライン(ミッテルライン。マインツとコーブレンツの間。ライン川はドイツ領内では上中下の三つに分けられる)のうつくしい風景がたのしめる。船が埠頭(ふとう)を離れると、やがて右手に緑なす丘陵が見えてくる。ドイツワインの名酒を生むラインガウ地域である。夏ならワイン用のブドウ畑が、陽光に葉波をキラキラときらめかす。丘の上にたつのがヨハニスベルク城。地下室には、世界で最も多い白ワインが貯蔵されている。とくに「遅摘みのブドウで作るシュペートレーゼ」はその味で世界の愛飲家に知られ、「シュペートレーゼの伝令」というワインの誕生秘話がある。伝令となった若者の馬上姿の銅像が、中庭にたっている。
もう1つは、19世紀のワイン商人の愉快なエピソード。ある商人が、ラインガウ地方のワインを売ることになった。アイディアマンだった商人は、ワインを「聖母のお乳」と名づけて売り出した。名前が名前だっただけに、そのころはかなり刺激的でセンセーションを巻き起こし、ワインは爆発的に売れた。「リープフラウエンミルヒ」というこの銘柄は、いまでも売られている。
近くにあるエバーバッハの僧院は、中世の峻巌(しゅんげん)な雰囲気をそのまま保っている。ショーン・コネリーが主演した映画「バラの名前」の僧院のシーンは、この僧院で撮影された。
◆特集「ラインガウのワイナリーめぐり」
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